ここではジンマー・バイオメット・デンタル株式会社が販売している「T3ショートインプラント」と呼ばれるインプラントの解説をしていきます。名の通りインプラント体の短さが、このインプラントの大きな特徴です。従来型のインプラントでは対応できなかった症例にも、この特殊な形状のT3ショートインプラントならば適応が可能となり、とても優れたインプラント体だといえます。

3i T3ショートインプラント

垂直的骨量不足にも適応可能である

インプラント治療では、意外にも顎骨の骨量が不足している症例が多くあります。特に垂直的骨量が不足しているとなると、下顎管や上顎洞への距離が近くなり、外科処置の偶発症のリスクが高くなってしまいます。この場合インプラント治療を見送る必要もでてきてしまいます。もちろん、そのようなケースには「垂直的骨造成術」や「上顎洞挙上術」などの不足している骨量を補う手術をすることも可能ですが、治療の長期化や、複雑な処置になってしまうなど、デメリットも増えてきます。
その一方で、T3ショートインプラントであれば、そういった骨造成術の併用をしなくてもインプラントオペの実施が可能です。上顎洞に近接した症例や下歯槽神経上部における垂直的な骨量不足の症例においても、ショートインプラントならそのまま埋入する事に成功しています。これはT3ショートインプラントならではの最大の強みだといえます。

垂直的骨量不足にも適応可能である

使いやすいサージカルキット

T3ショートインプラントは、サージカルキットの中にインプラントの埋入の際に必要とされる器械が全て備わっています。インプラント体は、一目で判断できるように5mm径が黄色、6mm径が緑色と色分けされているので取り扱を誤る心配がありません。それぞれの径に使用する器械も、使用しやすく色別に配置されています。

使いやすいサージカルキット

特徴的な機械

器械の名称 特徴
フラットボトム・シェーピング・ドリル クワッドシェービングドリル形状を踏襲したデザインのフラットボトム・シェーピング・ドリルは、適切な位置にインプラントを設置するために、インプラント体に合致するフラットボトムカッティングチップやカウンターシンク形状が採用されたシェーピングドリルです。これは各サイズのインプラントに対応している専用設計です。
デンス・ボーン・タップ T3ショートインプラント専用のデンス・ボーン・タップと呼ばれているボーンタップは、基本的には従来のボーンタップデザインを踏襲しています。それに加えて、タップ深度が識別できるレーザーマーキングが特徴的です。
ACTショート・ツイスト・ドリル 従来のACTドリルを踏襲したデザインのACTショート・ツイスト・ドリルは、レーザーマーキングによって、5mm長と6mm長のどちらのインプラントにも対応しています。2つのカッティングフルートがドリルの先端に付与されている事がこのドリル特徴といえます。

優秀なT3ショートインプラント技術

1T3サーフェス

インプラント治療は麻酔をしたうえで手術をするため、手術中に痛みを感じることはありません。しかし麻酔が切れると手術部位が痛んだり、腫れたりすることがあります。

一般的なインプラント治療であれば痛みや腫れは数日で治まりますが、切開部分が大きい場合や骨移植を行った場合などは痛みや腫れが長引く傾向にあります。そのような場合でも術後は痛み止めや抗生剤などのお薬が処方されますので、日常生活に支障をきたすほどの痛みは伴わずに過ごしていただけると思います。

痛み止めが効いていないのでは・・・と思うほどの激しい痛みがある場合や1週間以上、痛み・腫れが続く場合は、組織の火傷や細菌感染を起こしている恐れがあるので、早急に治療された歯科医院で受診しましょう。

2初期固定力が向上する

T3ショートインプラントは、精密な設計のショートインプラントと専用の器械のおかげで、埋入時の骨とインプラント体表面との接触率が極めて高くなっています。その為、インプラント体と形成窩洞との適合性が高まるので初期固定力が向上するのです。

3アバットメントとの堅固な連結

インプラント体に連結させるアバットメントには、特許を取得したGold-Titeスクリュー表面に特殊なコーティングが施されています。それがシーリング材の働きを持つので、アバットメントとインプラントとの連結力が最大化されます。また、生物学的幅径が確立されやすいように、アバットメントとインプラントとの接合部を内側に設計しています。

T3ショートインプラント埋入の手順

次にT3ショートインプラント埋入の手順を詳しく解説します。

STEP.1

包装箱から取り出す

No-Touch™ デリバリーシステムによってT3ショートインプラントが供給されます。そのため、始めに包装箱に梱包されたインプラントを取り出す必要があります。

STEP.2

清潔域にノータッチインプラントトレーを落とす

密封されたケースの中にノータッチインプラントトレーが入っています。不潔域のアシスタントがこれを手に取ってシールを剥がし、そして清潔域の上へと落とします。

STEP.3

サージカルトレーに設置する

術者はノータッチインプラントトレーを、サージカルキットに入っているサージカルトレーに設置します。

STEP.4

インプラントトレーのシールを剥がす

カバースクリューとインプラント体の確認ができるように、ノータッチインプラントトレーをサージカルトレーに設置したら、インプラントトレーのシールを剥がします。

STEP.5

インプラント体の取出し

付属されているハンドピースコネクターを使用してインプラント体を取出します。インプラント体を取出したら、落とさないようにしてインプラント体を天井に向けたまま患者様の口腔内へ運びます。

STEP.6

インプラント体の埋入

術野へインプラント体を運んだら約15~20rpmで埋入します。デンスボーンの場合は、タップを行います。

STEP.7

インプラント体を最終固定する

インプラント体を最終固定する際は、必要に応じ付属されているラチェットレンチとラチェットエクステンションを使用します。90Ncm以上の埋入トルクとなるケースには、長時間の手術を要するケースも少なくありません。この理由としては、急いで処置を行ってしまうと、インプラントの接合部が変形したり破損したりする危険性が高まる為です。

STEP.8

インプラントマウントの取外し

付属されているラージヘクスドライバーとオープンエンドレンチを使用して、インプラントマウントを取外します。インプラントマウントをオープンエンドレンチでしっかりと固定してから、ラージヘクスドライバーを使ってスクリューを緩めます。

STEP.9

カバースクリューを装着する

オペを2回法で行ったケースには、必ずカバースクリューを装着します。スモールへクスドライバーを使用してサージカルキットからカバースクリューを取出します。オペが1回法の場合は、ヒーリングアバットメントの装着をします。

STEP.10

歯肉を縫合する

上述した手順を踏んだら、最後に歯肉を縫合します。以上で手術が完了となります。