現在、インプラント治療後の不具合やトラブルでお悩みの方が増えています。インプラント治療のトラブルは、一般的に手術後、被せ物を被せる前に起こる「初期」のトラブルと、被せ物を被せて数か月後、また数年後、十数年後に症状が現れる「後期」のトラブルに分けられます。

初期の主なトラブル

インプラント手術後に起こる初期のトラブルは術後感染などの生物学的な要因、もしくは外科的ミスや設備環境の問題などメカニカルな要因によって起こることがほとんどです。特に外科的なミスとしては、ドリルの摩擦熱の冷却不足や神経の損傷、また鼻腔や上顎洞の損傷、血管の損傷などの可能性が考えられます。

1インプラント手術後の痛み・腫れ

インプラント治療は麻酔をしたうえで手術をするため、手術中に痛みを感じることはありません。しかし麻酔が切れると手術部位が痛んだり、腫れたりすることがあります。

一般的なインプラント治療であれば痛みや腫れは数日で治まりますが、切開部分が大きい場合や骨移植を行った場合などは痛みや腫れが長引く傾向にあります。そのような場合でも術後は痛み止めや抗生剤などのお薬が処方されますので、日常生活に支障をきたすほどの痛みは伴わずに過ごしていただけると思います。

痛み止めが効いていないのでは・・・と思うほどの激しい痛みがある場合や1週間以上、痛み・腫れが続く場合は、組織の火傷や細菌感染を起こしている恐れがあるので、早急に治療された歯科医院で受診しましょう。

インプラント手術後の痛み・腫れ
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2インプラント手術後の出血

インプラントの手術後は縫合して止血の処置をします。もちろん、ある程度の出血はありますが、通常は自然に止血するので心配はありません。ただし、翌日になっても出血が止まらない場合は軟組織の血管が傷付いているなどの可能性が考えられるので、早急に歯科医院にて受診してください。

インプラント手術後の出血

3インプラント手術後の麻痺・しびれ

インプラント手術で外科的なミスがあると、お口まわりに麻痺やしびれが生じる可能性があります。特に下顎の奥歯のインプラント治療では、他の部位に比べると麻痺・しびれが出やすいと言えます。下顎には「下歯槽神経」という大きな神経が通っており、手術中にその神経を傷付けてしまうと麻痺やしびれが生じます。もしインプラント手術の翌日に麻痺・しびれがあるようなら、すぐに歯科医院で受診しましょう。早期の対応によって、麻痺・しびれを解消できる可能性は高くなります。

「少しくらい、麻痺やしびれがあるのは当たり前」「治まるまで様子をみましょう」という歯科医院もあるようですが、これは信じられない話です。麻痺・しびれを放置して、インプラントが骨に結合するまで待っていたら取り返しのつかないことになります。場合によってはインプラントを除去することになってしまいます。

そもそも、麻痺・しびれが生じること自体が異常なことであり、CTやガイドシステムを使ってインプラント手術をしていれば十分に回避できるものなのです。インプラント治療は事前のシミュレーションによって安全性が担保されます。その意味ではCTやガイドシステムを使わずにインプラント治療をしている歯科医院は「セーフティ・ファースト」を放棄していると言わざるを得ません。

インプラント手術後の麻痺・しびれ

4インプラント手術後にインプラントがグラつく

インプラント手術後にインプラントがグラついたり、抜けてしまったりするケースが報告されています。原因として考えられるのは、主に以下の3点です。

インプラントと骨が結合していない

インプラントの素材であるチタンは顎の骨と結合する性質がありますが、まれに結合が起こらずインプラントのグラつき・脱落につながる場合があります。

インプラントと骨が結合しない原因としては、「手術時の顎骨の火傷」があります。ドリリングの際には熱が発生しますが、冷却不足になると顎の骨が火傷を負ってしまいます。火傷を負ってしまった場合はインプラントと骨の結合がうまくいかなくなります。

また、インプラントの埋入時は通常、細い径のものからドリリングをおこない段階に応じて径を太くしていくことでインプラントの径と顎骨の穴をぴったりと合わせますが、何らかのヒューマンエラーによってインプラントがぴったりと埋入されないケースがあります。そのような場合インプラントと顎骨の結合が阻害されてしまいます。いずれも、ほとんどの場合はドクターの技術不足・経験不足に起因しています。

細菌感染を起こしている

インプラントの手術をおこなう際、口腔内の環境が悪いと細菌感染を起こすリスクがあります。細菌感染を起こしてしまうと、歯茎に炎症・痛みが生じるほか、インプラントのグラつきや脱落につながる場合があります。これを防ぐためには、残っている菌が歯周病にかかっているのであれば完治させてからインプラント治療をすることが重要ですし、プラークコントロールができていないのであれば、患者さまご自身でセルフケアをできるようにブラッシングを習得していただくところから行うことが大切です。

また、手術室や手術に使う器具が不衛生だったり手術中の滅菌レベルが低かったりすると、細菌感染を起こすケースもあります。

過剰な刺激・力が加わった

インプラント手術後、患部に強い刺激や力などの負担がかかってしまうと、インプラントと骨の結合が妨げられてしまいます。

細菌感染を起こしている
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後期の主なトラブル

インプラント治療後、数か月後、また数年後、十数年後「後期」に症状が現れるトラブルの多くは「インプラント周囲炎」です。その他、患者さま自身が気付きづらい、知らない間の歯ぎしりや食いしばりなどの原因によるものが多いです。インプラントを長持ちさせるためには噛み合わせの調整や歯周病を改善しなければ、インプラントに負荷が掛かり被せ物が外れたり、インプラント周囲炎が引き起こされたりします。
すでにインプラント治療を終えた患者さまでも今からでも改善は行えますので、是非ご覧ください。

1噛み合わせの調整や原因の追究

当院ではインプラントで歯を作る際、必ず噛み合わせのチェックを行います。対象箇所の噛み合わせが悪い時には、歯のサイズや形態を調整し、アバットメント(土台)の角度を調整するといった対処で、噛み合わせを整えることができます。

しかし、対象箇所に収まらず、あごの位置がずれている場合や、お口の中全体の噛み合わせを整える必要がある際は、対象箇所のみの調整だけでは不十分です。根本となる噛み合わせの悪さを引き起こしている原因を追究して、全顎的な治療を行わなければなりません。

噛み合わせの調整や原因の追究

2インプラント周囲炎の予防

インプラント周囲炎は、歯を失う原因と同時にインプラント治療にとっても大きく影響を及ぼす病気です。
インプラント周囲炎である歯周病は歯ぐきが腫れて出血するだけではなく、細菌感染によって歯を支える骨が溶かされてしまうため、結果的に歯が自然に抜けてしまう病気です。インプラントも同じような現象が起き、外れてしまうことにもなるので、インプラント周囲炎(歯周病)の完治は必要不可欠なのです。

インプラント周囲炎の予防